免税と非課税って違うの?

2024年3月29日消費税・インボイス

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最近になって、インボイス制度に関するニュースはあまり聞かなくなりましたが、2割特例などの軽減措置が終わる頃に、もう一波乱あるのでしょうか。

消費税は個人や法人に関わらず、事業者であれば必ず関係しますし、赤字でも納税義務が発生する点において、事業への影響が大きいと言えます。

ところで、利益に応じて課税される所得税や法人税に比べると、消費税はその仕組みが難解です。

特に、輸出業で消費税が返ってくるのに、非課税の売上を扱う業種で消費税が返ってこないのは何故なんでしょうか?

普段あまり気にすることはありませんが、免税と非課税には、税制上において大きな違いがあります。

今回はやや地味なテーマではありますが、課税取引の基本について、解説します。

課税取引の分類

消費税の4要件

教科書の1ページ目に書いてあるような事ですが、消費税の4要件について、おさらいしましょう。

  1. 国内において
  2. 事業者が事業として
  3. 対価を得て行う
  4. 資産の譲渡、資産の貸付、役務の提供

上記の4要件を全て満たすと消費税の課税対象になりますが、1つでも該当しないと課税対象にはならず、そうした取引を「不課税取引」と言います。

不課税取引

具体的な不課税取引を、要因別に纏めると、以下の様になります。

国内取引 事業性 対価性 譲渡等
海外での取引 ×
個人売買※、給与収入 ×
補助金、寄付金 ×
保険金、配当金 ×

※ 事業を行っていない純粋な個人が、業として行わない取引

非課税取引

消費税の4要件を満たすが、社会政策的配慮から、課税対象にはならない取引を「非課税取引」と言います。

具体的には、以下のような取引が非課税取引に該当します。

  • 土地の譲渡・貸付
  • 有価証券等の譲渡
  • 支払手段(収集品を除く通貨・小切手・約束手形等)の譲渡
  • 預貯金の利子、保険料を対価とする役務提供
  • 郵便切手・印紙・商品券・プリペイドカード等の譲渡
  • 国等が行う一定の事務に係る役務提供
  • 外国為替業務に係る役務提供
  • 社会保険医療の給付(介護保険サービス、社会福祉事業、助産を含む)
  • 火葬料・埋葬料を対価とする役務提供
  • 一定の身体障碍者用物品の譲渡・貸付等
  • 学校教育、教科書用図書の譲渡
  • 住宅の貸付(1ヶ月未満の貸付を除く)

出所:国税庁HP

福祉や医療は、確かに事業としてサービスが提供されているので、不課税ではありませんが、政策上の配慮で非課税なんですね。

なお、住宅の貸付(家賃収入)は非課税ですが、事業用のアパート等を譲渡する際は課税取引、自宅の譲渡は事業性が無いので不課税です。

免税取引

さて、不課税と非課税の違いはOKでしょうか?

消費税について、この違いが曖昧であっても、さほど困る事はありませんが、一方で免税取引はしっかり押さえておく必要があります。

因みに、消費税の納税義務がない事業者を免税事業者と言いますが、ここで扱う免税は、売上取引で消費税が免除される場合の免税を指します。

課税事業者が以下の様な輸出取引等を行った場合は、消費税が免除されます。

  1. 国内から輸出として行われる資産の譲渡・貸付
  2. 国内と国外との間の通信・郵便等
  3. 非居住者に対する著作権・営業権等の譲渡・貸付、役務提供

免除を受ける為には、上記1の場合は税関長が証明した輸出許可書の保存、上記2・3の場合は一定事項が記載された帳簿や契約書等の保存が必要です。

輸出取引である事の要件を満たした場合、その売上に係る消費税が免除される一方、支払った消費税は税額控除の対象となる為、消費税の還付を受けられます。

 

免税と非課税の違い

ここからが本題です。

上記で見たように、輸出取引の要件を満たせば、支払った消費税が還付されるのに、住宅の貸付といった非課税の売上を扱う業種で消費税が還付されないのは、なぜなんでしょうか?

還付が受けられる場合

まず、消費税の還付が受けられる事業者は、以下に該当する事業者になります。

  • 課税事業者
  • 原則課税方式(本則課税)を適用している事業者

開業や設立間もない事業者で、課税事業者を選択してなければ免税事業者となるので、その場合、消費税の還付は受けられません。

輸出を扱う事を決めている事業者が、設立初年度から課税事業者を選択するのは、消費税の還付を受ける為です。

また、簡易課税や2割特例の適用を受けている事業者は、消費税の計算が売上のみで完結する為、同様に消費税の還付は受けられません。

なお、輸出業でなくても、設備投資等で課税仕入が高額になったり赤字の場合は、消費税の還付を受けられる事があります。

仕入税額控除の方法

消費税の納付額は、課税売上に含まれる消費税から、課税仕入に含まれる消費税を差し引きして計算します。

この時、非課税売上に対応する仕入に係る消費税は、仕入税額控除の対象にはなりません。

住宅の貸付は非課税売上なので、この収入に紐づく仕入や経費については、仕入税額控除の対象にならないため、消費税の還付を受けられない事になります。

課税仕入に含まれる消費税をどの収入に紐づけるかは、やや複雑なルールがあります。

まず、課税売上が95%以上で、課税売上高が5億円以下であれば、仕入に係る消費税は全額控除できます。

非課税売上を扱わない業種の中小企業であれば、ほとんどがこの全額控除の対象になります。

一方、課税売上が95%未満、若しくは課税売上高が5億円超の場合、以下の2つの方法を選択適用して対応します。

  • 個別対応方式
  • 一括比例方式

個別対応方式とは、仕入に係る消費税を、課税、非課税、共通の3つの売上区分に分類し、課税と非課税はそれぞれ個別に、共通は課税売上割合を乗じて対応させる方法です。

一括比例方式とは、仕入税額の合計額に、課税売上割合を乗じて、仕入税額控除を計算する方法です。

事務的に簡便である一括比例方式を選択するケースが多いと思いますが、一括比例方式は一度選択すると、2年間は継続適用する必要があります。

出所:国税庁HP

免税取引は課税扱い

上記の様に、非課税売上に係る仕入や経費については、基本的に仕入税額控除ができない仕組みになっています。

ところで、免税取引は、なぜ仕入税額控除が可能なのでしょうか?

実は、免税取引は課税扱いになっています。

輸出なので、物品等は海外に向けて運ばれて行きますが、海外取引ではなく、従って不課税取引ではありません。

では、どこで行われる取引かというと、国内港における船上です。

いわゆるFOB(Free on Board)で船上渡しという貿易用語がありますが、税務的なロジックは、国内港における船上渡しで物品等が引き渡される事を想定していて、純粋な国内取引として扱われます。

ややこしいですが、海外取引ではないが、海外で消費されるものには課税しないという考えに基づくものであると、国税庁HPでは説明されています。

もう少し言えば、仮に輸出売上が非課税取引だった場合、輸出業者は実質的に国内仕入に係る消費税を負担する事で、その分を輸出価格に上乗せすると、国際市場での価格競争力が弱くなる事を避ける狙いがあると考えられます。

この点だけ見れば、政策上の配慮と言えるので、非課税取引とよく似ていますが、免税取引は産業強化のための特別な配慮がされていると言えます。

課税売上割合の計算

免税取引が特別扱いされている事が分かった所で、消費税申告における具体的な違いを見ていきましょう。

先ほどの仕入税額控除の計算において、課税売上割合に触れましたが、具体的な計算方法は、以下の様になります。

  • 課税売上割合 = 課税売上高 ÷(課税売上高 + 非課税売上)

この時、免税取引は課税売上高として扱うので、分母分子の両方に足される事になります。

一方、不課税取引は、そもそも消費税の対象ではないので、分母分子のどちらにも関係がありません。

不動産賃貸業や診療所等を除けば、一般的な事業会社における非課税売上は預金利息くらいしかないので、課税売上割合は99.9%というのが多いと思います。

輸出業においても、他に非課税売上がなければ、同様に99.9%という事になるので、売上高が5億円以下であれば、仕入に係る消費税の全額控除が可能です。

 

まとめ

消費税の分類をまとめると、以下のようになります。

消費税4要件を全て満たす 課税取引 国内で消費 課税取引
輸出取引 免税取引
政策上の配慮 非課税取引
1つでも該当しない 不課税取引

こうして見ると、免税、非課税、不課税には、それぞれ意味の違いがあり、課税売上割合の計算においては、少なからず影響がある事が分かります。

曖昧にしていた消費税の分類について、これですっきりしたでしょうか?

消費税還付のモヤモヤが解消すれば、幸いです。