インボイスって、どうなの?

2023年10月24日消費税・インボイス

⏱この記事は 6 分で読めます。

いよいよ始まりました、インボイス。

インボイスのそもそもの意味は、「送り状」の事です。従来は外為用語で、昔から使われていました。

正式名は、適格請求書等保存方式、制度の登録を受ける者は、適格請求書発行事業者といいます。

とても複雑な制度ですが、もう数年前から制度の開始がアナンウンスされていたので、準備していた方も多いと思います。

でも、新たな負担を強いられるフリーランスの方をはじめとして、関係ないと言える人まで巻き込んで、世の中は大騒ぎの様相を呈しています。

今回は、この混乱を鎮めるため、独自の切り口で状況を整理してみます。

 

なにが混乱の原因?

混乱の原因は、制度が複雑だからに尽きるのですが、じゃあ、なにが複雑なのでしょうか?

どっち側の話?

第一に、「お金を支払う側」と、お金を受け取る側である「サービスの提供者」、双方の立場の話がごちゃごちゃの状態で語られるからです。

よくニュースなどで、「取引を打ち切られるかも知れず、零細企業は廃業の危機に直面している」というフレーズを聴きますが、これは「お金を支払う側」、「サービスの提供者」、どっち側の話で、何が問題なのでしょうか?

インボイス制度の開始によって、立場の弱い零細事業者が廃業してしまうという点が強調されていますが、影響を受けるのは、サービスを提供する零細事業者だけではありません。

お金を支払う側では、免税事業者への支払いに関して仕入控除ができなくなる事に加え、事務的な負担がかなり増えます。

また、それぞれの立場で、対応する経過措置が異なるため、混乱を更に深めているとも言えます。

 

商売相手は誰?

第二に、誰を商売の相手にしているかという点です。

お金を支払う側にとって、支払う相手が免税事業者だと困る訳です。今後は仕入控除ができなくなり、その分の納税額が増える事になります。

でも困るのは、支払う側が、課税事業者の場合ですよね。

支払う側が、免税事業者だったり、事業を行っていない純粋な個人だったりした場合は、関係ないとも言えます。

つまり、支払ってくれる商売相手が、免税事業者や純粋個人の場合は、慌ててインボイスの登録を行う必要はありません。

業態としては、日用品を扱う商店、理容室・美容室、習い事教室などが思い浮かびます。

上記の業態であっても、法人利用や会社経費で利用する客が多いお店などは、インボイス登録を行った方がいい場合があります。

また、非課税売上がほとんどを占める場合、そもそもインボイス登録を行うメリットがない場合もあります。

業態としては、クリニック、調剤薬局、居住用住宅の賃貸業などです。

医療関連と居住用賃貸は非課税売上になるのが理由ですが、自由診療の多いクリニック、日用品の割合が多い薬局、一部に商用テナントがある賃貸業の場合は、上記業態であっても、インボイス登録を行った方がいい場合があります。

 

インボイスの何が大変なの?

まず、適格請求書とは何なのか、おさらいしましょう。

適格請求書の追加項目

「区分記載」請求書 「適格」請求書
① 発行者の氏名・名称 ① 発行者の氏名・名称
② 取引年月日 ② 取引年月日
③ 取引内容 ③ 取引内容
④ 取引金額 ④ 取引金額
⑤ 請求される者の氏名・名称 ⑤ 請求される者の氏名・名称
⑥ 軽減税率の対象品目である旨 ⑥ 軽減税率の対象品目である旨
⑦ 税率毎に合計した税込額 ⑦ 税率毎に合計した税込額
  ⑧ インボイス登録番号
  ⑨ 税率毎の消費税額・適用税率

今までの請求書は、「区分記載」請求書と言って、税率毎に合計した税込額を表示すればいいとされていました。

これに加え、「適格」請求書は、インボイス登録番号と、税率毎の消費税額適用税率が加わります。

要件を満たした適格請求書を保存しないと、支払う側は、原則として100%の仕入控除はできなくなるので、適格請求書を発行しようとする全ての課税事業者に関係することになります。

なお、免税事業者は、適格請求書の発行ができません。つまり、今まで通りでいいという事です。

一方、請求書を受け取る側、つまりお金を支払う側ですが、この仕入控除が問題となるのは、本則課税の課税事業者だけです。

免税事業者や、課税事業者であっても簡易課税制度、若しくは2割特例を選択している場合は、支払いに関する新たな事務負担はありません。

売り先に自分のインボイス番号を通知する

もう1年以上前から準備を進めている会社がほとんどだったと思いうので、自分のインボイス番号の登録は既にクリアしていると思います。

登録した番号を、サービスを提供する相手、つまり売り先に対して通知するだけなので、特定の顧客を相手にしている場合は、そんなに大変ではないと思います。

また、不特定多数の場合であっても、制度開始のずいぶん前から、請求書にインボイス番号を記載している場合がほとんどなので、この点については、さして大変な事態ではなかったと思います。

支払い先のインボイス番号を把握する

大変なのは、こちらの方です。

支払う相手が、特定の会社に限られる場合はそんなに大変ではありませんが、不特定多数に対する支払いが大量に発生する業態などは、新たな支払先の登録有無を都度確認する必要があるので、大変です。

特に支払う相手が個人事業主メインである場合は、その中に免税事業者も多く含まれる事が想定されるため、仕入税額控除の経過措置の運用と併せ、制度の運用が大変になるのです。

繰り返しですが、免税事業者や、課税事業者であっても簡易課税制度、若しくは2割特例を選択している場合は、支払い先のインボイス番号を把握する必要はありません。

本当にワークするの?

さて、支払い先のインボイス番号を把握するという作業を、今後も継続的に維持していけるのでしょうか?

支払う相手が大手企業の場合は、インボイスの登録をしているのが通常でしょうし、その数が限定的であれば、さほど問題にはならないでしょう。

問題は、支払う相手が個人や中小企業で、多数にわたる場合です。新たな支払いが発生する都度、登録有無を確認しにいくでしょうか?

管理がしっかりしている規模が大きめの会社はいいとしても、個人事業主やひとり社長の会社が本則課税の課税事業者であれば、かなりの負担です。

なお、少額・多数の支払い先がある事業者の負担を軽減するために、少額特例制度が設けられています。

 

まとめ

これまで見てきたように、制度が複雑なゆえ、自分にとって何が関係するのか、分かりにくくなっています。

その点を簡単にまとめてみます。

お金を支払う側

  • 支払先が免税事業者だと、控除される消費税が減り、納税額が増える
  • 要件を満たした適格請求書を保存しないと、仕入控除ができなくなる
  • インボイスの登録有無を確認する必要があり、事務上の負担が増える
  • 仕入税額控除の経過措置
  • 少額特例の適用有無

サービス提供者

  • 今回を機に課税事業者になる場合は、消費税の納税義務が課される
  • 課税事業者の場合は、要件を満たした適格請求書を発行する
  • 免税事業者の場合は、今後価格交渉するのか、課税事業者になるのか
  • 2割特例の適用有無

影響が限定的な業態

  • 純粋な個人を商売相手にしている(個人商店、床屋、習い事教室、etc)
  • 扱う品目の大部分が非課税(クリニック、調剤薬局、住宅の賃貸、etc)

 

最後に、誰が何に関係するのかを、ざっくり表にしてみます。

誰が 年間売上 適格請求書 仕入控除 その他
本則課税 1億円超 発行必須 経過措置あり  
1億円以下 少額特例
簡易課税 5千万円以下 関係ない  
免税事業者 1千万円以下 発行できない 2割特例*

* 本来免税事業者で、今回を機に課税事業者になった人が対象

 

いかがでしたでしょうか。

経過措置や特例は、今後の世論で期間が延長されるかも知れませんが、永遠に続くものでもないと思いますので、取引先との向き合い方を決めていく必要があると思います。