インボイスの経過措置

2023年10月25日消費税・インボイス

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インボイス制度は零細事業者にとっての影響が大きく、ただでさえ反対意見が大きく取り上げられている訳ですから、「インボイスのせいで倒産してしまった!」とは言われたくないと思います。

そこで、制度導入による影響を和らげる為に、様々な負担軽減措置が設けられています。

この措置は、いわば激変緩和措置であり、いずれも時限付きの経過措置になっています。

ただ、インボイス制度自体も複雑な上に、この経過措置も複雑です。

つまり、「お金を支払う側」なのか、お金を受け取る側の「サービス提供者」なのか、どちらで使える制度なのかを整理しないと、混乱します。

 

仕入税額控除の経過措置

国税庁HP

まず、お金を支払う側で使える制度です。

免税事業者に対する支払いは、その消費税相当額について、預かった消費税との差し引きができず、その分の負担が増すことになります。

こうなると、免税事業者を取引から排除しようという動きにつながる懸念があるため、これを緩和しようとする措置と言えます。

激変緩和措置なので、他と同様、経過措置がありますが、この部分はやや複雑です。

支払った金額の消費税相当額について、当初3年間は80%、次の3年間は50%を仕入控除にできます。7年目以降、この経過措置はなくなり、仕入控除は0%になります。

後述する特例とは違い、前から決まっていた経過措置なので、内容が複雑な反面、周知はかなり進んでいると思います。

また、関係する会社が普段から事業者にお金を支払う立場であり、管理面が整っている場合が多いため、内容に伴う混乱はあまりないかも知れません。

少額特例

国税庁HP

次も同様に、お金を支払う側で使える制度です。

少額・多数の支払先を抱える小規模事業者にとって、インボイス番号の把握は煩雑であり、日常業務として維持していくのは大変です。

その為、基準期間(2期前)における年間売上1億円以下の事業者を対象として、税込1万円以下の支払いに対する取引については、インボイスの保存義務が免除され、仕入控除も100%可能となる特例が設けられています。

この特例の経過措置は、6年間です。決算期は関係なく、特例期間が終わると、期の途中でもインボイスの保存義務が課されます。

2割特例

国税庁HP

最後に、サービスを提供する側で使える制度です。

売上規模が小さく、今まで免税であった事業者にとって、インボイス制度の開始は大きな痛手と言えます。

お金を支払う側において、前述の仕入税額控除の経過措置があるので、すぐに取引解消とならなくても、経過措置が完了するまでに、売り先と価格面の交渉を行うなり、課税事業者になるかしないと、消費税分の売上が減ることになります。

そこで、課税事業者になる事を躊躇している免税事業者の背中を押す制度として、本来の消費税を安くする優遇措置を設けています。

特例が適用できる期間は3年ですが、個人であれば3年3ヶ月、3月決算の会社であれば3年半の適用が可能です。

対象は、本来は免税事業者(基準期間の年間売上1000万円以下)が対象で、簡易課税制度の選択有無は問いません。

簡易課税の場合、みなし仕入率90%の卸売業のみ、2割特例を選んでしまうと不利ですが、それ以外は2割特例に分があります。

サービス業を例に挙げれば、売上税額に対するみなし仕入率は50%(つまり、売上税額の50%)ですが、2割特例を選択すれば売上税額の20%となり、納める消費税が2/5に軽減されます。

これを簡単な計算例で示します。

売上高550万円、事業経費110万円の場合における消費税納税額

【本則課税】 仮受消費税50万円 ー 仮払消費税10万円=40万円

【簡易課税】 仮受消費税50万円 ×(100%-みなし仕入率50%)=25万円

【2割特例】 仮受消費税50万円 × 20%=10万円

このように、事業経費の少ないフリーランスの方であれば、原則通りの計算では40万円と計算されるところ、簡易課税を選択すれば25万円、さらに2割特例を選択すれば10万円まで、消費税納税額を圧縮できます。

なお、本則課税であっても2割特定を適用することができるので、特例期間中は様子を見て、特例が終わる迄に簡易課税にするか決める事もできます。

まとめ

誰が、どんな場合に使えるかなどを、簡単にまとめてみます。

制度名称 誰が? どんな場合? 期間
仕入税額控除の経過措置 本則課税の事業者 免税事業者への支払い 6年
少額特例 基準期間の売上1億円以下の事業者 税込1万円以下の支払い 6年
2割特例 本来免税事業者で、課税事業者になった人 売上に対する課税 3年+α

いかがだったでしょうか。

内容は複雑であっても、かなりの節税に繋がるので、制度を上手く活用することをお勧めします。