年末調整・法定調書の対象者

2023年11月9日年末調整

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年末調整で悩ましいのは、誰が対象なのか?という点です。

正社員のみで中途の入退社が少ない場合は、そんなに悩まないのですが、パート従業員が多い業態の場合、年途中での入退社が非常に多かったりします。

配偶者等の扶養を受けていたり、いくつかの職場を掛け持ちしている人など、家庭の事情や勤務形態も様々です。

また、年末調整が終わってホッとしていると、今度は法定調書の提出が待っています。

この法定調書の対象者も難解で、頭が混乱します。

今回は、対象者となる基本的な決まり事と、年末調整手続におけるケースごとの対応方法について、解説していきます。

年末調整の対象者

対象となる人、ならない人

年末調整の対象者は、当年の12月31日に在籍している役員、従業員で、扶養控除等申告書を会社宛に提出している人、又は、給与から所得税の源泉徴収が行われているいる人です。

従業員は、正社員のほか、契約社員、技能実習生、パート、アルバイトなども含まれます。

但し、以下の役員、従業員は除きます。

  • 年収2000万円を超える人
  • 災害減免法の規程により、税金の徴収猶予や還付を受けた人

なお、年収103万円以下の従業員で、以下の両方に該当する場合、年末調整手続は必要ありません。

  • 会社に扶養控除等申告書を提出していない
  • その人の給与から所得税の源泉徴収が行われていない

但し、年末調整手続が不要な場合でも、年明けに自治体宛に提出する給与支払報告書の対象にはなるので、その方については、以下の情報を把握しておく必要があります。

  • 氏名(フリガナ)
  • 住所
  • 生年月日
  • マイナンバー

年末に在籍していない場合

年の途中で退職している場合、その方の年末調整は不要となりますが、次の勤務先で必要になりますので、年末調整をしない源泉徴収票を発行します。

一方で、年の途中でも年末調整が必要なケースもあります。

  • 海外転勤などにより、非居住者となった場合
  • 死亡による退職
  • 退職後に、再就職の予定がない人
  • 12月分の給与を受け取って、退職した人

扶養を受けている場合

扶養を受けている被扶養者の場合、年末調整は必要でしょうか?

質問の多い点ですが、年末調整の対象者は、被扶養者かどうかは関係ありません。

現に、被扶養者であっても、年末調整をする事によって、会社から還付を受けているケースは多いです。

被扶養者とするかの判定は、扶養者側の勤務先における年末調整で決まるため、被扶養者側がその結果に影響を受けると、手続きが循環参照してしまいます。

扶養を受けている=年収103万円以下という事が前提ですが、会社に扶養控除等申告書を提出しているか、会社が所得税の源泉徴収をおこなっている場合は、年末調整が必要です。

また、年収103万円以下であっても、自治体によって年収93~100万円を超えると住民税の課税対象になります。

この場合、給与支払報告書の対象から漏れると、住民税の申告が必要になってしまうので、注意が必要です。

掛け持ちアルバイトの場合

掛け持ちアルバイトで、年収103万円以下かどうか、分からないケースはどうしたらいいでしょうか?

本人はわかっていても、会社側で把握できない場合もありますよね。

扶養控除等申告書が提出できるのは、1社のみと定められているので、もし他のアルバイト先で提出済みであれば、自社で年末調整手続を行うことはできません。

メインのバイト先で扶養控除等申告書を提出していて、メイン以外の年収が20万円以下であれば、確定申告は不要です。

しかし、メイン以外が20万円を超える場合は、合算した年収で本人が確定申告を行う必要があるので、その旨を会社から説明してあげる必要はあると思います。

また、会社は年末調整の有無を問わず、給与支払報告書を自治体に提出する事で、自治体はその方の年収総額を知る事ができます。

仮に、その方が確定申告をさぼったとしても、本人に申告漏れのペナルティーが科されることに繋がりますので、その点は説明をしておいた方が、親切かと思います。

短期間のアルバイトを繰り返している場合

短期間のアルバイトを繰り返している人は、12月31日に在籍している会社で、12月支給の給与を受け取る際に、まとめて年末調整を行います。

この手続では、本人が当年に退職した、全ての勤務先の源泉徴収票が必要ですが、紛失している場合は前職に問い合わせて、改めて発行してもらうように伝えます。

 

法定調書等の対象者

年末調整手続を終えて、新しい年を迎えると、今度は法定調書等の提出が待っています。

この法定調書等には、税務署に提出する法定調書と、各従業員の住所地の市町村に提出する給与支払報告書が含まれます。

どちらも従業員毎の明細書を添付しますが、その対象者が異なるので、注意が必要です。

法定調書

法定調書に添付する源泉徴収票の対象者は、以下となります。

対象となる人 年収
年末調整の対象者 従業員 500万円超
役員 150万円超
年末調整の非対象者 全員 2000万円超
退職者 従業員 250万円超
役員 50万円超
扶養控除等申告書の未提出者 全員 50万円超

給与支払報告書

一方、給与支払報告書に添付する個人別明細表の対象者は、当年で1度でも給与を支払った人全員が対象となります。

つまり、年末調整の対象者かどうか、扶養控除等申告書の提出をしているかは関係ありません。パート従業員であっても、1円以上の給与を支払えば、対象となります。

但し、当年中に退職した人で、支払合計額が30万円以内の場合に限り、個人別明細表の提出義務が免除されます。

この個人別明細表は、源泉徴収票と内容はほぼ同じですが、扶養親族がいる場合の記載方法等が、一部異なります。

通常は年末調整のソフトから自動的に作成できますので、両者の違いを意識することはほとんどないと思います。

 

まとめ

最後に、手続毎に対象となる人をまとめます。(数字は万円)

  年末調整 確定申告 法定調書 給与支払報告書
従業員 × 年収500超
役員 × 年収150超
退職者 従業員 × 年収250超 支給30超
 〃  役員 × 年収50超
年収2000超 ×
被扶養者 通常通り判断 ×
掛け持ちバイト メインなら○
短期バイト ×
控除申告書未提出 × 年収50超

 

いかがだったでしょうか。

給与計算ソフトに年末調整や法定調書の作成機能が付随している場合は、ソフトが自動的に処理してくれますが、全てをソフト任せにしていると、細かい点で漏れが生じることがありますので、注意が必要です。