相続税申告までのやる事リスト
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事業の承継に立ちはだかる、相続という問題。
事業承継税制は複雑な制度ですが、その理解の第一歩として、相続税の基本的な枠組みを押さえておく必要があります。
基礎控除の枠内であれば、そもそもの申告が不要であるケースや、特例を活用すれば納める税金がゼロになるケースなど、相続税制度の枠内の検討で済む場合があります。
今回は、相続税申告までにやる事について、解説していきます。
全体の流れ
被相続人が亡くなられた場合、相続税申告までにやる事をまとめると、以下のようになります。
時期 | やる事 |
3ヶ月以内 | 遺言書の有無を確認 |
相続財産・負債の調査 | |
法定相続人を確定させる | |
単純承認・相続放棄・限定承認の選択 | |
4ヶ月以内 | 被相続人の準確定申告を行う |
10ヶ月以内 | 財産目録を作成する |
遺産分割協議書を作成する | |
遺産分割手続を行う | |
相続税の申告・納付を行う |
遺言書の有無を確認
被相続人が亡くなられたら、まず最初にやる事は、遺言書の有無を確認する事です。
遺言書がある場合は、遺言書の内容に沿って財産を分割するのが原則となりますが、法定相続人の全員が同意すれば、遺言書通りではない遺産分割を行う事もできます。
また、遺言書の内容が遺留分を侵害する内容である場合、遺言書自体が無効になる事はありませんが、侵害された相続人は、遺留分減殺請求により、自分の遺留分を取り戻す事ができます。
この請求は、訴訟提起などの手続きを行う事なく、法定相続人は請求すれば当然に遺留分を取得するとされています。
ただ、事が円満に進まない場合は、内容証明郵便などで請求し、意思表示を明確にします。
なお、遺言書には要件があり、原則として自筆とされていますが、遺言書が自宅に保管されていた場合は、開封前に家庭裁判所の検認が必要になるので、注意が必要です。
相続財産・負債の調査
被相続人が残すものは、預金、不動産、有価証券などの財産的価値があるものに限られず、借金や保証債務など、マイナスの財産も含まれます。
特に中小企業の経営者は、借入金の連帯保証人になっているケースが多いので、保証債務が億円単位という場合も考えられます。
過去に代表を退いて、既に経営の一線を退いていたとしても、保証債務は経営者の交代によって自動的に消滅する訳ではないので、過去に会社経営を行っていた場合は、債務の調査を早めにスタートさせる必要があります。
法定相続人を確定させる
亡くなられた方の出生から亡くなるまでの戸籍謄本を取得して、法定相続人を調査します。
相続人が、相続発生以後の日付で、戸籍の全部事項証明書、及び戸籍の附票を取得します。
被相続人に直系の家族がいない場合などは、調査を弁護士に依頼する事も可能ですが、調査には時間がかかる場合もあるため、早めに取り掛かる必要があります。
単純承認・相続放棄・限定承認の選択
亡くなられた方の全ての権利や義務を引継ぐ場合は、「単純承認」になります。
但し、資産よりも負債が多い場合は、その資産・負債の一切を引継がない「相続放棄」の検討を行います。
また、どこにいくらの借金があるか分からないようなケースでは、相続で得られる財産を限度として債務を引き継ぐ「限定承認」の方法を選択する事が可能です。
相続放棄や限定承認を選択したい場合は、家庭裁判所への申し立てが必要です。
申し立てをせずに3ヶ月を超えてしまったり、相続財産を処分・隠匿・消費した場合は、原則として単純承認したものと看做されるため、注意が必要です。
準確定申告を行う
被相続人の1月1日から亡くなられた時点までの収入は、確定申告する必要がありますが、亡くなった人の代わりに行う手続を、準確定申告と言います。
相続人全員が、被相続人の住所地の税務署に対して、この準確定申告をする義務を負います。
それぞれの相続人が準確定申告を行う方法もありますが、通常は相続人の中で代表者を決め、相続人全員が連署した上で、準確定申告書を1つにまとめて提出します。
この手続の申告・納付期限は、相続発生から4ヶ月以内です。
納付義務も相続人全員が負うため、遺産を複数人で分ける場合は、納付についても複数人で分担する必要があります。
準確定申告は、以下の場合に必要です。
- 事業所得や不動産所得がある
- 給与収入が2000万円以上ある
- 複数の会社から収入がある(但し、従たる給与が年20万円以下は不要)
- 給与・退職金以外で20万円以上の収入がある
- 公的年金の収入が400万円超ある
- 生前に株式や不動産を売却し、譲渡所得による納税義務が発生している
- 保険の満期金や一時金を受け取っている
上記以外にも、医療費控除など、申告すれば還付を受けられるケースでは、義務ではないものの、申告した方がいい場合があります。
また、会社勤務で年収が2000万円以下であれば、勤務先が年末調整をしてくれますので、基本的に準確定申告は不要です。
財産目録を作成する
相続財産・負債の調査結果、葬儀費用などの立替や、準確定申告の納税額を加味した相続財産を確定し、財産目録を作成します。
ここで確定された財産の金額は、相続税の計算におけるベースとなります。
遺産分割協議書を作成する
遺言書がない場合は、相続人全員が協議の上、遺産の分割割合について合意する必要があります。
分割割合についての協議がまとまれば、遺産分割協議書を作成し、全ての法定相続人の自署と押印(不動産がある場合は実印)を行います。
協議が申告期限までにまとまらない場合、特例や税額控除が使えなくなる可能性があります。
遺産分割協議書の内容や作成上の留意点は、以下の記事をご参照下さい。
遺産分割手続を行う
遺言書や遺産分割協議書の内容に沿って、預金解約や不動産の名義変更を行います。
不動産の名義変更には、登録免許税(0.4%)がかかります。また、司法書士に依頼する場合は、その報酬も併せて必要になります。
相続税の申告・納付を行う
相続税額を計算し、相続開始を知った日から10ヶ月以内に相続税の申告と納付を行います。
相続税の申告要否と計算手順については、以下の記事をご参照下さい。
最後に
いかがだったでしょうか。
先代経営者がお亡くなりになれば、事業の継続など、ただでさえ非日常の混乱に陥るなか、相続の事まで気が回らないと思います。
しかし、相続が争続にならないようにするには、事業承継に向けた準備が肝心かと思います。
相続税には、各種特例や資産の評価方法を踏まえた税額の計算、遺産分割協議が申告期限に間に合わない場合など、制度の全般を俯瞰するには、多岐にわたる注意点があります。
それらの点は、また改めて取り上げる事にします。