贈与税 2024年1月改正のポイント

2023年11月29日制度改正,事業承継・贈与税・相続税

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2024年1月より、改正された贈与税の施行がスタートします。

今回の改正をざっくり言えば、相続時精算課税の使い勝手が良くなる一方、暦年課税の制約が増える点です。

贈与税申告に占める相続時精算課税の適用が1割程度と低迷していたため、この制度の利用促進を図る事で親族内贈与を加速させ、経済を活性化させたいとの狙いが見え隠れします。

また、事業承継税制における特例承継計画書の提出期限が2024年3月に迫っているので、改正ポイントを押さえた上で、猶予される納税額を正確に把握しておきたいものです。

今回は、改正のポイントと、従来よりあった相続時精算課税の制度内容について、おさらいします。

 

改正のポイント

改正前後をまとめると、下表のようになります。

制度 改正点 改正前 改正後
相続時精算課税 基礎控除 なし 110万円
申告義務 必要 110万円以下不要
被災控除 なし 被災分を減額
暦年課税 生前の加算期間 3年 7年
上記4-7年の控除 なし 100万円

出所:国税庁パンフレット

基礎控除創設と申告義務

2024年1月以降に相続時精算課税を選択した場合、暦年課税の基礎控除とは別に、贈与の都度、贈与税の課税価格から基礎控除110万円が控除されます。

この基礎控除額の合計は、精算時の相続税の課税価格からも控除されます。

また、同一年中に複数の特定贈与者(相続時精算課税制度を選択した場合の贈与者)から贈与を受けた場合、この基礎控除110万円は、特定贈与者事の課税価格で按分します。

なお、相続時精算課税制度は、引き続き暦年課税との併用はできませんが、基礎控除110万円が創設されたので、少額の贈与であれば、実質的に暦年課税との併用と同じ効果が得られるようになりました。

さらに、相続時精算課税を選択すると、それ以降は少額でも贈与税の申告義務がありましたが、今回の改正で、その年の贈与額が110万円以内であれば、申告が不要になりました。

被災控除創設

相続時精算課税を選択している場合、贈与された土地、又は建物について、その贈与から相続時の申告書の提出期限迄に、一定の被害を受けた場合は、相続税の課税評価額からその被災額を控除する事ができるようになりました。

一定の被害とは、贈与時、若しくは災害時の価額の10%以上となる被害です。

また、被災額とは、被害額から保険金等で補填される額を控除したもので、贈与時、若しくは災害時の価額を限度とします。

なお、土地・建物は、贈与から被災した日迄、継続して所有していた場合に限られます。

生前加算期間等の見直し

相続、又は遺贈により財産を取得した場合、その相続開始前3年以内に被相続人から贈与された財産は、相続税の課税価格に遡って加算されます。この事を「持ち戻し」と言います。

今回の改正で、この持ち戻しされる期間が、3年から7年に延長されます。

同時に、延長された4-7年における贈与財産については、100万円の控除枠が新設されます。

基礎控除110万円を超えない範囲で暦年課税を活用している場合は、同期間における基礎控除が110→100万円に縮小されるのと同じ効果なので、あまり大きなインパクトはないと言えます。

なお、改正は2024年1月からスタートしますが、遡って適用される事はありませんので、2026年12月までは、実質的に従前通り、以降徐々に延長された期間の影響を受け、2031年1月から完全に改正後の期間による影響を受けるようになります。

今回3年から7年に期間が延長されたのは、駆け込みでの贈与に対する、相続税制度との平等性確保かと思われます。

 

相続時精算課税のおさらい

贈与税の税率は、相続税よりも高いので、親から子へ大きな財産を引継ぐ場合、相続時まで待つ方が税金が安くなります。

ただ、これだと贈与者が亡くなるまで、必要な財産が子へ引き継がれずに、有効活用されない可能性があります。

そこで、一定の要件のもと、贈与税の非課税枠を設けたのが、相続時精算課税制度です。

特別控除枠2500万円

相続時精算課税の適用を受ければ、特別控除枠2500万円までは非課税です。

適用を受ければ、1人の贈与者からの合計額が2500万円に達するまで、何回贈与を受けても非課税です。

また、この枠は贈与者毎に設定されるので、例えば両親からなら、最大5000万円まで非課税になります。

なお、1人の受贈者から2500万円を超える部分は、一律で税率20%となるので、本来の税率で計算される贈与税よりもない納税額で済みます。

相続時の精算方法

相続時には、贈与された財産は相続財産と合算して相続税を再計算しますので、いったん納税された贈与税がある場合は、再計算された相続税から差し引き、差額を納税します。

この時、相続税の方が安ければ、既に納めた贈与税は還付されます。

特別控除枠の2500万円の範囲で生前贈与を行い、相続税の基礎控除枠にも収まる場合は、贈与税・相続税共に負担する事はありません。

他の制度との併用

相続時精算課税の控除枠は、暦年課税の基礎控除枠と混同しがちですが、両制度が併用できない点は、従来通りです。

制度の適用は、贈与者毎に選択する事ができますが、一度選択すると、その贈与者については暦年課税に戻すことはできません。

また、この制度は、相続税における小規模宅地等の特例との併用もできません。同特例は、生前贈与への適用がない為です。

宅地の評価額が高い場合は、制度の適用是非について、慎重に検討する必要があるでしょう。

 

制度の活用

どちらを選択すべき?

暦年課税は110万円の非課税枠があり、相続時精算課税との併用ができない点が最大のお悩みポイントでした。

制度の改正により、相続時精算課税でも110万円の非課税枠が創設されたので、この点で悩む必要はなくなったと言えます。

加えて、暦年課税における生前贈与の加算期間が延長されたので、贈与者が高齢であれば、この制約のない相続時精算課税を選択するインセンティブが増したと言えます。

ただ、贈与する財産が現金・有価証券といった分割可能な資産で、相続財産全体の金額が大きい場合は、相続税と一緒に再計算される相続時精算課税よりも、暦年課税が有利になるケースもあります。

価値が変動する財産

贈与を行うべきタイミングは、贈与する財産の時価が低い時です。

相続時精算課税、暦年課税の持ち戻しのいずれも、贈与時の価額を相続時の課税価格に加算します。

これから値上がりが見込める有価証券や、事業が順調な場合の自社株などは、相続を待って引き継ぐよりも、生前贈与の制度を活用した方が、納税額が少なくなる可能性があります。

逆に、価値が毀損していく可能性が高い財産については、生前贈与は慎重であるべきと言えます。