法人税の中間納付書が届かない?

制度改正,法人税

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法人税や消費税は、確定申告で一定の納税額を超えると、翌期に中間納税をする必要があります。

この中間納税の納付は、e-TAX上の電子納付や、ペイジー、クレジットカードなどに加えて、紙の納付書を使って、金融機関等で納付する事ができます。

紙の納付書は、中間納付すべき金額が予め印刷されたもので、毎年決まった時期に、他の県民税・市民税と同様に、郵送で送られてきます。

ところが、2024年5月より、法人税の中間納税については、この紙の納付書の送付を取りやめる事が発表されました。

中間納付の情報は、e-TAXのメッセージボックスにもお知らせが届いていますが、内容を見過ごす事もあり、うっかり延滞してしまうケースもあると思います。

今回は、意外と大変な中間納付の電子対応について、具体的な対応方法を考えていきます。

 

取りやめの経緯

中間納税とは?

法人における納税の仕組みには、中間納税という制度があります。

正確には、期初から半年間の決算に基づく中間申告という制度があって、その申告で確定した分の税金を納める制度が中間納税です。

でも、中間申告は任意なので、何もせず言われた金額を納税すれば、中間申告の手続きを省略できるので、ほとんどの事業者は中間申告をしません。

中間納税額は、前年度で確定した納税額に連動するので、当期の納税額が少なくなる見込みであれば、中間申告をすると、当座の資金繰りにプラスの効果があります。

ただ、1年を通じた納税額は変わらないので、資金繰りに効果はありますが、税金が安くなるという意味での節税効果はありません。

中間申告の義務者

法人税等の中間申告の義務者は、国税である法人税額(税額控除後の額)の確定額が20万円(前事業年度が12ヶ月の場合)を超える普通法人です。

法人税等には、国税である法人税・地方法人税の他にも、法人事業税・住民税(県税・市税)がありますが、国税で中間申告をする場合は、県や市に対しても同様の中間申告が必要です。

なお、消費税等の中間申告の回数は、国税である消費税(地方消費税を除く)の確定額によって、以下の様になります。

確定消費税額 ~48万円 ~400万円 ~4800万円 4800万円超
申告回数 確定1回 確定1回
中間1回
確定1回
中間3回
確定1回
中間11回

出所:国税庁HP

送付の取りやめ理由

今回、中間納付書の送付が取りやめとなったのは、法人税・地方法人税で、前事業年度の確定申告書をe-TAXで提出した法人が対象です。

消費税や、県税・市税といった自治体からは、金額が印字された納付書が従来通り郵送で届きますので、ご安心を。

しかし、税務署はなんで法人税の中間納付書の送付をやめたのでしょうか?

国税庁の発表では、「社会全体の効率化と行政コスト抑制の観点から、法人税予定申告書用紙を送付しないこととしております」とあります。

国税庁HP:法人税及び地方法人税予定申告書の送付等に関するお知らせ

確かに、紙の納付書による納税は、他の電子納付等の方法に比べると、利用者の手間のみならず、行政側のコストも甚大である事は、容易に想像できます。

趣旨としては、理解できます。

でも、電子納付を始めとした他の納付方法は、ひと手間を要するものが多く、利用促進という面において、どれも決定打に欠けています。

この事が、数の上では多数をしめる零細事業者における電子化への移行を阻み、結果として、紙の納付書に依存する現状があるのではないかと思います。

 

納付書以外の納付方法

ここで、紙の納付書以外の納付方法について、おさらいしてみましょう。

振替納税

振替納税とは、納税者名義の預貯金口座から、自動振替で納付する方法です。

利用の開始方法は、e-TAXから依頼書を提出するか、専用用紙を税務署や金融機関へ提出する必要があり、手続完了まで1~2ヶ月を要します。

時間がかかる上に、県税や市税も振替納税にする場合は、国税と同じ手続きが計3回(都税事務所管轄の場合は計2回)必要であるため、やや面倒に感じます。

ただ、一度手続を済ませてしまえば、あとは自動的に口座から引き落とされるだけなので、引落日の残高だけ気をつければ大丈夫です。

ダイレクト納付

ダイレクト納付とは、e-TAXで申告書を提出した後に、納税者名義の預貯金口座から、手動の操作で納付する方法です。

利用の開始方法は、事前にe-TAXの利用開始手続きを行った上で、専用の届出書を書面で所轄税務署へ提出する必要があり、手続完了まで1~2ヶ月を要します。

なお、個人の場合は、届出書をオンラインで提出する事が可能です。

振替納税と同様、県税や市税も同じ手続が必要であるため、やや面倒です。

また、納付手続を納税者が行う場合は、e-TAXやeL-TAXに納税者自らがログインする必要があり、ある程度の慣れが必要な作業になります。

日常的に仕事でPCを使うような事業者であれば大丈夫ですが、そうでない場合は、あまりお勧めできません。

ペイジー

国税庁では、インターネットバンキング等からの納付手続と呼んでいるようですが、要はペイジーによる納付の事です。

利用開始の手続は不要で、手数料や金額上限もありません。

e-TAXで申告書を提出した後に、ペイジー用の番号発行依頼を行い、その番号を利用して、ペイジーに対応している金融機関で納付を行います。

なお、中間申告を行わずに中間納税だけする場合、ペイジー用の番号は発行されませんので、番号は自分で生成する必要があります。

e-TAX:入力方式による納税手続

ペイジーは、県税や市税にも対応しており、e-TAXやeL-TAXで番号発行依頼を行うと、即時に番号が発行されるので、申告した当日中に、机にいながら全ての納税を完了する事ができます。

番号の発行手続を税理士に依頼すれば、e-TAX等の操作を事業者が行う必要はありませんし、納付は事業者自身が行うため、セキュリティー上の問題もクリアします。

電子納付の中では、一番お勧めできる方法ではありますが、そもそもインターネットバンキングを利用している事が前提なのと、ペイジーが全ての金融機関に対応していない点が、おしい所です。

Pay-easy:ペイジーが使える金融機関

クレジットカード

クレジットカード納付とは、国税クレジットカードお支払サイトから、クレジットカードで納付する方法です。

利用開始の手続は不要ですが、一定の手数料がかかり、金額も1回につき1000万円が上限です。

手数料は0.8~1%程度なので、ポイントが多く付くカードの場合は元が取れそうですが、税金支払はポイントが付かないケースが多いので、要注意です。

電子納付の中では一番手軽ではありますが、手数料がかかるので、納税金額が少額であれば、利用価値のある方法と言えるでしょう。

スマホアプリ納付

スマホアプリ納付とは、国税スマートフォン決済専用サイトから、スマホアプリで納付する方法です。

利用開始の手続や、手数料は不要ですが、利用可能金額は30万円以下です。

PayPay、d払い、auPay、LINEPayなど、主要な電子決済が利用できます。

クレジットカードと並んで手軽な方法ではありますが、上限金額が30万円以下なので、その範囲であれば、手数料がかからない分、お得と言えるでしょう。

コンビニ納付(QRコード)

コンビニ納付とは、自宅のパソコン等で作成したQRコードを使用し、コンビニの多機能端末で納付書を出力して、レジで納付する方法です。

利用開始の手続や、手数料は不要ですが、利用可能金額は30万円以下です。

この方法の利点は、電子決済を利用せずとも、現金で納付が可能な点です。

そうなると、もやは電子決済ではなく、自分で納付用紙を作成する方法と言えるので、税理士に依頼せず、自分で税務申告をしている事業者にとっては、利用価値のある方法かも知れません。

なお、似た方法として、コンビニ納付(バーコード)というのもありますが、これは税務署から送付されたバーコード付の納付書を使って納付する方法です。

つまり、法人中間税は、従来はこの方法で送付されており、金額が印字された納付書が納税者に郵送されていました。

 

何が問題か

これまで見てきたように、納税の方法には、納付書以外にも多様な方法がある事がわかります。

ここ最近の電子決済の急速な拡大もあり、行政側が試行錯誤しているように見えますが、なぜ紙による納付が減らないのでしょうか?

要因は、大きく2つあると思います。

  • 利用開始に伴う事前手続
  • e-TAX等の操作

利用開始の手続が必要な方法には、振替納税やダイレクト納付がありますが、日常の支払いを銀行振込で行っている多くの事業者にとって、ちょっとした手続であっても、大きなハードルになる可能性があります。

また、e-TAX等の操作を事業者自ら行うのも、大きなハードルだと思います。

ダイレクト納付は、両方におけるハードルがあるので、いい仕組みだとは思うのですが、使い勝手という点で今一つです。

二つの点をクリアする方法として、ペイジーが優れているとは思いますが、中間納付は番号を自分で生成するという点が分かりにくく、シンプルかという点で今一つです。

他の方法は、手数料が必要であったり、上限金額が少額だったりするので、いずれも法人の納税方法としては、決定打に欠けると言わざるを得ません。

 

最後に

結局のところ、今回の中間納付については、納付書への記入方法を税理士側で案内し、事業者は手書きで納付書を作成するという、新たな手間が生じています。

また、紙で申告書を提出している事業者には、従来通り、金額入りの中間納付書が届きますので、これをきっかけにe-TAXの利用をやめてしまう事業者が出てくるかも知れません。

これでは本末転倒ですが、今回はあまり周知されてこなかった分、影響が徐々に広がっていく可能性があります。

これを機に、振替納税や電子納付にトライしようという機運が高まればいいのですが、そもそも年に1~2回しかないレアな事務の為に、面倒な事はしたくないというのが実情だと思います。

個人的は、ペイジーの仕組みが優れていると思うので、入力する番号をシンプルにする等、使い勝手を改良すれば、もっと普及すると思います。