確定申告 所得の種類と計算の仕組み
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今年もやって参りました、確定申告。
個人の確定申告は年に1回、翌年2/16~3/15に提出する事になっています。
因みに、e-Taxで電子申告する場合は、翌年1/4から受付がスタートします。
また、申告義務のない人が還付を受ける為に申告する場合は、上記の期間と関係なく、翌年1/1から5年間提出する事ができます。
いずれにせよ、年に1回の手続なので、前回の事はすっかり忘れてるし、計算はソフト任せで、よくわからないまま終わってますよね。
確定申告に関係があるのは、個人事業主や給与収入2000万円以上の人ですが、中には資産運用や副業の為に申告が必要な人もいると思います。
今回は、通常だとあまり気にする必要のない所得の種類や計算の仕組みについて、詳しく見ていきたいと思います。
所得の種類
所得の種類は、10種類あります。
給与所得 | 給与、賞与 |
事業所得 | 商業、工業、農業、漁業、自由業 |
不動産所得 | 不動産・土地・船舶・航空機の貸付 |
一時所得 | 保険の満期返戻金、懸賞・賞金 |
雑所得 | 他のいずれにも属さない所得(公的年金、原稿料、FX等) |
利子所得 | 公社債・預貯金の利子、貸付信託・公社債投信の分配金 |
配当所得 | 株式の配当、証券投信の分配、出資剰余金分の分配 |
譲渡所得 | 事業用資産・家庭用資産(ゴルフ会員権等)の売却 |
山林所得 | 5年超所有の山林に係る収入 |
退職所得 | 退職金、社会保険の退職一時金 |
課税方式と税率
所得税の課税方式には、総合課税と分離課税があります。
総合課税
総合課税は、その課税方式に分類される所得を全て合計し、合計額に対して累進性の税率が適用されます。
生活に必要な最低限の収入に対しては低率ですが、所得が900万円を超えるあたりから税率が爆増する仕組みになっています。
総合課税における所得税と住民税の合計税率は、以下の様になります。
課税所得 | 所得税+住民税 | 控除額 |
195万円以下 | 15% | 0円 |
330万円以下 | 20% | 9.75万円 |
695万円以下 | 30% | 42.75万円 |
900万円以下 | 33% | 63.6万円 |
1800万円以下 | 43% | 153.6万円 |
4000万円以下 | 50% | 279.6万円 |
4000万円超 | 55% | 479.6万円 |
分離課税
分離課税は、他の所得とは合算せず、その所得に集計される単独の金額に対して、独自の計算方法で税金を計算する方式です。
退職金や不動産の売却益など、その時だけ多額の所得が発生するような所得は、総合課税にすると累進課税で税金が激しく増加します。
そこで、あまり起こらないケースでの所得については、一定の税率や、通常より低い累進課税で計算できる分離課税の制度が設けられています。
分離課税における所得税と住民税の合計税率は、以下の様になります。
所得の種類 | 対象 | 税率 | 所得税+住民税 |
利子所得 | 特定公社債・公社債投信 | 定率 | 20.315% |
配当所得 | 上場株・証券投信 | ||
譲渡所得 | 証券・先物・国内FX等 | ||
不動産(所有5年超) | |||
〃 (所有5年以内) | 39.63% | ||
山林所得 | 5年超所有の山林収入 | 累進 | 5分5乗方式※ |
退職所得 | 退職金 | 累進税率×1/2 |
※ 所得の1/5に累進税率を乗じ、計算された金額を5倍して税額を求める方式
所得税の計算方法
所得の種類毎に課税方式と計算式を簡単にまとめると、以下の様になります。
所得の種類 | 課税 | 控除 | 経費 | 計算式・備考 |
給与所得 | 総合 | ○ | ※1 | 給与収入-給与所得控除 |
事業所得 | 合計 65万 |
○ | 事業収入-必要経費-控除 | |
不動産所得 | ○ | 不動産収入-必要経費-控除 | ||
一時所得 | 50万 | ○ | (収入-経費-控除)×1/2 | |
雑所得 | ○ | × | 公的年金:収入-控除 | |
× | ○ | 原稿料・FX等:収入-経費 | ||
利子所得 | 総合 | × | × | 海外預金の利子 |
分離 | × | × | 特定公社債の利子 | |
配当所得 | 総合 | × | × | 非上場株の配当 |
分離 | × | × | 上場株の配当は総合も可 | |
譲渡所得 | 総合 | 50万 | ○ | ゴルフ会員権・その他資産※2 |
分離 | × | ○ | 不動産、証券・先物取引 | |
山林所得 | 分離 | 50万 | ○ | (収入-経費-控除)×5分5乗方式 |
退職所得 | ○ | × | (退職金-控除)×1/2×累進税率 |
※1 給与所得控除の半分を超える特定支出がある場合は、差し引けます。
※2 所有5年超の場合は、総合課税の場合も税率が1/2になります。
出所:財務省HP
損益通算
損益通算とは、同一年分の利益と損失を合算する事です。
給与所得を得ている人が、他の所得で赤字の場合、プラスとマイナスを通算する事ができれば、源泉徴収された所得税の一部が返ってくるかも知れません。
ただ、全ての所得を通算する事はできず、損益通算にはやや複雑なルールが存在します。
基本ルール
基本的には、総合課税の中で利益と損失が通算される仕組みですが、通算できるグループが以下の様に決まっています。
グループ | 通算できる損失 | 通算できる利益 |
①経常 | 事業、不動産 | 利子・配当(総合)、給与、雑 |
②譲渡・一時 | 譲渡(総合) | 一時 |
①②で控除しきれない損失 | 山林、退職 |
まず①②それぞれで通算し、控除しきれない損失があれば①と②を通算します。
それでも控除しきれない損失がある場合は、山林所得→退職所得の順番で通算します。
上記の例外として、不動産所得に係る土地の借入金利子・別荘等の貸付に係る損失、生活必需品ではない資産(宝石、ヨット、ゴルフ会員権等)や自家用車等の譲渡損失は、損益通算の対象になりません。
不動産と証券等の譲渡
分離課税が適用される不動産の譲渡について、同じ年に売却した不動産どうしは損益通算は可能ですが、他の所得との損益通算はできません。(居住用不動産は特例あり)
また、趣味・娯楽・保養目的で保有する別荘等の不動産から生じる譲渡損は、不動産どうしであっても、損益通算はできません。
なお、分離課税が適用される証券等の譲渡については、種類毎にグループ化されており、そのグループ内での損益通算が可能になっています。
詳しくは、下記記事の損益通算をご参照下さい。
損失の繰越控除制度
損益通算をしても赤字が残る場合は、翌年以降3年にわたり、赤字を繰越す事ができます。
対象となる赤字は、事業所得、不動産所得、譲渡所得の一部、山林所得です。
ただ、この制度の適用を受けるには、青色申告である事が必要で、適用を受ける間は、連続して確定申告を行う必要があります。
なお、法人と同様に、前年が黒字の場合は、前年に納めた所得税の繰戻還付を申請する事も可能です。
最後に
こうして見ると、個人の税制は、法人と比べて、とても複雑な事がわかります。
所得の種類に応じて、控除や課税方式が細かく決められているのは、その所得が生じる状況に細かく配慮した結果だと思われます。
それにしても、複雑ですね。
特に損益通算のルールは、わかりやすい一覧表でまとめてみようと思いましたが、もはや困難なレベルです。
通常は申告ソフトが間違いなく計算してくれるので、本当にありがたい事だと思いました。