株式会社の作り方

2020年7月31日会社設立

以前のブログでは合同会社の作り方を扱いましたが、今回は株式会社です。

合同会社にはない手続きも含まれるので、一度整理してみましょう。

 

設立費用の違い

合同会社と一番違う点は、ここでしょうか。

  合同会社 株式会社
登録免許税※1 60,000円 150,000円
定款認証 なし 52,000円
電子定款※2 5,000円 5,000円
実印作成 5,000円 5,000円
合計 70,000円 212,000円

※1 登録免許税は、最低課税金額
※2 電子定款費用は、会社設立freeeの場合

両者の差は、約14万円です。

まだどうなるかわからない段階の出費としては、結構大きい額です。

 

合同会社から組織変更する場合

最初に合同会社を設立しておいて、あとから株式会社に組織変更することもできます。その場合の費用は、以下になります。

  最初から㈱ 合同会社→㈱
設立時免許税 150,000円 60,000円
定款認証 52,000円 なし
電子定款 5,000円 5,000円
実印作成 5,000円 10,000円
変更時免許税 なし 60,000円
官報公告 なし 32,000円
合計 212,000円 167,000円

最初から株式会社を設立するより、費用面で4.5万円安いです。

ただ、手続きが面倒になります。

債権者保護手続といって、組織変更する旨を官報で公告する必要があります。債権者(会社から見た場合、債務を負っている相手先)がいなくても、この手続きをする必要があります。

公告を出す場合、すぐに出すことはできないので、2週間後くらいからになります。さらに1ヵ月の公告期間が必要となりますので、トータルで2ヶ月くらい必要になります。

定款の作成と違って、自分で全て行うのは大変なので、結局、司法書士などに依頼することになると思います。

報酬の相場は5万円程度ということなので、結局、費用面でのメリットもなさそうです。

最初から株式会社にすることが確定しているなら、わざわざこの方法をとる必要はありません。

 

定款の作成(合同会社と異なる点)

定款の作成は、合同会社のやり方とあまり変わりませんが、株式会社特有の項目がいくつかあります。

株式の譲渡制限

株式会社は、定款に株式の譲渡制限の記載があるかどうかで、組織設計が大きく異なります。

譲渡制限があれば、ほぼ合同会社と同じといって差し支えありません。

一方、定款に譲渡制限の定めがない場合(公開会社と言います)、代表者の知らない所で、会社の株が自由に売買されてしまいます。

ひとり社長の会社設立であれば、自分以外の株主は存在しないので、関係ないと思いがちですが、自分の死後、複数の相続人に受け継がれて、「争続」に発展しないとも限りません。

なので、ここは「代表取締役の承認が必要」と定めましょう。

一株の価額、発行可能株式総数

これも合同会社にはない概念です。

適当に、一株10,000円、発行可能株式総数10,000株とでもしておきましょう。

全株発行すれば1億円ですが、そこまで増資することは、たぶんないでしょう。

昔の商法は、一株50,000円という時代もあったので、それにひっぱられて50,000円にしている会社も見受けますが、パッと見、計算しにくいです。

さらに株券不発行にすれば、一株の価額や株数など、どうでもよいことです。

なお、公開会社の設立時における発行株式数は、発行可能株式総数の4分の1を下回ることができませんが、定款で株式の譲渡制限を定める会社は、この制約はありません。

機関の設置、役員の任期

定款で取締役会の設置を決めます。取締役会は3名以上の役員が必要になりますので、ひとり社長の場合は、設置できません。

商法の時代、株式会社は7名の発起人が必要で、3名以上の役員で取締役会を設置し、監査役が必要など、零細企業の実態にそぐわない過重な制度設計でした。

この点を大幅に簡素化したのが新しい会社法で、株主は1人、取締役は代表者のみ1人、取締役会の設置は不要、監査役も不要、さらに定款で株式の譲渡制限を定める会社は、役員の任期を最大10年に延ばせるようになりました。

実質的に、ひとり社長の株式会社は昔から存在していて、株や役員の名義だけを親族とかの名前にしていただけです。

その後、相続などで名義株が複数人に散逸してしまい、困った事態を招くケースが頻発するようになったので、法律が改正されたのでしょう。

実態と制度設計が一致するようになり、使い勝手は飛躍的に向上しました。

ただ、役員の任期は最大10年なので、設立10年後、役員重任の登記をしないと、過料が課されることになっています。

また、そのままほったらかしにすると、法務局の職権で、会社登記自体が抹消されるおそれもあります。

この点は、合同会社にはない、面倒な部分だと思います。

行政書士に依頼する電子認証手続き

電子定款による手続きの場合、公証役場に提出するのは電子データになるので、サイト経由で行政書士に電子認証手続きを依頼します。

まず、定款を受け取る公証役場を選択します。同じ都道府県内なら、どこでも構いません。

次に、出来上がった定款内容のチェックをした上で、以下の書類をスキャンしたものをサイト上にアップロードします。

  1. 代表者の印鑑証明書
  2. 実質的支配者となるべき者の申告書
  3. 顔写真付きの本人確認資料

アップロードが終わったら、行政書士からの連絡を待ちます。

 

公証役場での定款認証

行政書士から認証手続き完了の連絡があったら、手続き時に指定した公証役場に出向いて、認証済みの定款を受け取ります。

役場といっても、市役所ではありません。定年後の裁判官が在籍する、裁判所の天下り先のような機関です。

混み合う場合もあるので、事前に電話してから行くといいでしょう。

一連の公証役場に関する手続きは、合同会社にはない点です。

必要となる書類は、以下となります。(ひとり社長の場合)

  1. 代表者個人の印鑑証明書コピー(原本持参)
  2. 代表者個人の実印(訂正がある場合に必要)
  3. 代表者個人の本人確認資料
  4. 定款認証の手数料(現金で約52,000円)
  5. 製本した定款 2部
  6. 新品のCD-R(定款の電子データ受取り用)

定款は、受領したPDFをプリントアウトし、2か所ホチキス止めしたものを袋とじし、割り印をしたものを2部製本します。

定款の電子データは、行政書士が公証役場へ予め送信していますので、当日は公証人が認証したデータを、新品のCD-Rに格納してもらいます。

紙で2部提出するのは、原本(電子データ)の謄本という位置づけで、1通は法務局提出用、1通は自社保存用として、公証人が認証したものを返却されます。

あとの法務局での登記申請手続きは、合同会社とほぼ同じです。

続きは、以下のブログをご参照下さい。