株式会社の作り方
以前のブログでは合同会社の作り方を扱いましたが、今回は株式会社です。
合同会社にはない手続きも含まれるので、一度整理してみましょう。
設立費用の違い
合同会社と一番違う点は、ここでしょうか。
合同会社 | 株式会社 | |
登録免許税※1 | 60,000円 | 150,000円 |
定款認証 | なし | 52,000円 |
電子定款※2 | 5,000円 | 5,000円 |
実印作成 | 5,000円 | 5,000円 |
合計 | 70,000円 | 212,000円 |
※1 登録免許税は、最低課税金額
※2 電子定款費用は、会社設立freeeの場合
両者の差は、約14万円です。
まだどうなるかわからない段階の出費としては、結構大きい額です。
合同会社から組織変更する場合
最初に合同会社を設立しておいて、あとから株式会社に組織変更することもできます。その場合の費用は、以下になります。
最初から㈱ | 合同会社→㈱ | |
設立時免許税 | 150,000円 | 60,000円 |
定款認証 | 52,000円 | なし |
電子定款 | 5,000円 | 5,000円 |
実印作成 | 5,000円 | 10,000円 |
変更時免許税 | なし | 60,000円 |
官報公告 | なし | 32,000円 |
合計 | 212,000円 | 167,000円 |
最初から株式会社を設立するより、費用面で4.5万円安いです。
ただ、手続きが面倒になります。
債権者保護手続といって、組織変更する旨を官報で公告する必要があります。債権者(会社から見た場合、債務を負っている相手先)がいなくても、この手続きをする必要があります。
公告を出す場合、すぐに出すことはできないので、2週間後くらいからになります。さらに1ヵ月の公告期間が必要となりますので、トータルで2ヶ月くらい必要になります。
定款の作成と違って、自分で全て行うのは大変なので、結局、司法書士などに依頼することになると思います。
報酬の相場は5万円程度ということなので、結局、費用面でのメリットもなさそうです。
最初から株式会社にすることが確定しているなら、わざわざこの方法をとる必要はありません。
定款の作成(合同会社と異なる点)
定款の作成は、合同会社のやり方とあまり変わりませんが、株式会社特有の項目がいくつかあります。
株式の譲渡制限
株式会社は、定款に株式の譲渡制限の記載があるかどうかで、組織設計が大きく異なります。
譲渡制限があれば、ほぼ合同会社と同じといって差し支えありません。
一方、定款に譲渡制限の定めがない場合(公開会社と言います)、代表者の知らない所で、会社の株が自由に売買されてしまいます。
ひとり社長の会社設立であれば、自分以外の株主は存在しないので、関係ないと思いがちですが、自分の死後、複数の相続人に受け継がれて、「争続」に発展しないとも限りません。
なので、ここは「代表取締役の承認が必要」と定めましょう。
一株の価額、発行可能株式総数
これも合同会社にはない概念です。
適当に、一株10,000円、発行可能株式総数10,000株とでもしておきましょう。
全株発行すれば1億円ですが、そこまで増資することは、たぶんないでしょう。
昔の商法は、一株50,000円という時代もあったので、それにひっぱられて50,000円にしている会社も見受けますが、パッと見、計算しにくいです。
さらに株券不発行にすれば、一株の価額や株数など、どうでもよいことです。
なお、公開会社の設立時における発行株式数は、発行可能株式総数の4分の1を下回ることができませんが、定款で株式の譲渡制限を定める会社は、この制約はありません。
機関の設置、役員の任期
定款で取締役会の設置を決めます。取締役会は3名以上の役員が必要になりますので、ひとり社長の場合は、設置できません。
商法の時代、株式会社は7名の発起人が必要で、3名以上の役員で取締役会を設置し、監査役が必要など、零細企業の実態にそぐわない過重な制度設計でした。
この点を大幅に簡素化したのが新しい会社法で、株主は1人、取締役は代表者のみ1人、取締役会の設置は不要、監査役も不要、さらに定款で株式の譲渡制限を定める会社は、役員の任期を最大10年に延ばせるようになりました。
実質的に、ひとり社長の株式会社は昔から存在していて、株や役員の名義だけを親族とかの名前にしていただけです。
その後、相続などで名義株が複数人に散逸してしまい、困った事態を招くケースが頻発するようになったので、法律が改正されたのでしょう。
実態と制度設計が一致するようになり、使い勝手は飛躍的に向上しました。
ただ、役員の任期は最大10年なので、設立10年後、役員重任の登記をしないと、過料が課されることになっています。
また、そのままほったらかしにすると、法務局の職権で、会社登記自体が抹消されるおそれもあります。
この点は、合同会社にはない、面倒な部分だと思います。
行政書士に依頼する電子認証手続き
電子定款による手続きの場合、公証役場に提出するのは電子データになるので、サイト経由で行政書士に電子認証手続きを依頼します。
まず、定款を受け取る公証役場を選択します。同じ都道府県内なら、どこでも構いません。
次に、出来上がった定款内容のチェックをした上で、以下の書類をスキャンしたものをサイト上にアップロードします。
- 代表者の印鑑証明書
- 実質的支配者となるべき者の申告書
- 顔写真付きの本人確認資料
アップロードが終わったら、行政書士からの連絡を待ちます。
公証役場での定款認証
行政書士から認証手続き完了の連絡があったら、手続き時に指定した公証役場に出向いて、認証済みの定款を受け取ります。
役場といっても、市役所ではありません。定年後の裁判官が在籍する、裁判所の天下り先のような機関です。
混み合う場合もあるので、事前に電話してから行くといいでしょう。
一連の公証役場に関する手続きは、合同会社にはない点です。
必要となる書類は、以下となります。(ひとり社長の場合)
- 代表者個人の印鑑証明書コピー(原本持参)
- 代表者個人の実印(訂正がある場合に必要)
- 代表者個人の本人確認資料
- 定款認証の手数料(現金で約52,000円)
- 製本した定款 2部
- 新品のCD-R(定款の電子データ受取り用)
定款は、受領したPDFをプリントアウトし、2か所ホチキス止めしたものを袋とじし、割り印をしたものを2部製本します。
定款の電子データは、行政書士が公証役場へ予め送信していますので、当日は公証人が認証したデータを、新品のCD-Rに格納してもらいます。
紙で2部提出するのは、原本(電子データ)の謄本という位置づけで、1通は法務局提出用、1通は自社保存用として、公証人が認証したものを返却されます。
あとの法務局での登記申請手続きは、合同会社とほぼ同じです。
続きは、以下のブログをご参照下さい。